本日の結論 「相手の強みを消す布石」「簡単に進塁を許さない守備」が勝敗を分けた
夏の全国大会(横浜スタジアム)の最終予選である東海4県代表チームによる東海大会が行われました
注目カードである一戦を直接観戦してきました
予想通りのハイレベルな闘いだったので、勝敗のポイントや今後の参考になる点について共有したいと思い、本記事を執筆しています
選手はもちろん、スタッフは今回しっかり重要な点を押さえてください
両チームの「強み」分析
名古屋ドジャース
- 2枚看板(全国大会でも1試合を投げ切れる投手2名)
- 経験豊富な野手陣(昨年から出場している選手がスタメンの半数)
- 安定した守備陣(県大会でもほぼノーミス)
- 勝ち癖(1年生の時からほぼ負けなし)2022春全国準優勝
- 地の利(大会までに何度か試合会場で練習できる)
東海大翔洋中
- 強力投手陣(120km超え5名)右4・左1
- 中学トップレベル捕手(セカンドスロー2秒前後、捕球・ストップも文句なし、声かけ◎)
- 高校生並みのスイング力(1〜5番までは高校生)
- 果敢な走塁(特に3盗)失敗OKでカンガンくる
- 多彩な攻撃パターン
結果 名古屋ドジャース4ー0東海大翔洋中
まずは試合内容を簡単に載せておきます ※スコアは書いてないので、私の記憶力を信じてください
先攻 名古屋ドジャース(以下、ナゴド)
後攻 東海大翔洋中(以下、翔洋)
1回表 ナゴド攻撃 翔洋P 11(右) 得点1
翔洋は大柄な速球派投手が先発 力みからかボールが全体的に高い印象
先頭に四球、犠打で送って1死2塁、3番は良い当たりも外野のほぼ定位置へ
2死2塁から4番打者が右中間へ、センターがダイビングキャッチを挑みグラブに当たるも捕球できず ナゴド 1点先制
1回裏 翔洋攻撃 ナゴドP1(右) 得点0
ナゴド先発Pは背番号1 今まで見てきた試合の中で1番ストレートに威力もあり、制球もほぼ完璧
低めのスライダー(ボール球)にも手を出させるなど、打者から見てもかなりキレていたはず
1死から2番(左)を内野安打で出塁
3番打者(左)が追い込まれてからランエンドヒット?、鋭い打球が1・2塁間へ
ファーストが横っ飛びで打球を収め、1塁はアウト
2死2塁で4番(左)を迎えるも、スライダーで体勢を崩し、ファーストゴロ 無失点
2回表 ナゴド攻撃 得点0
先頭打者が右中間にエンタイトルツーベースを放つ
次打者が送って、1死3塁 ※翔洋は簡単に送らせた印象
内野は前進守備、ストレート2球で追い込み、3球勝負 ※もちろんランナーのスタートは警戒
高めの真っ直ぐで詰まらせて、内野フライで2死 後続も打ち取り、無得点
2回裏 翔洋攻撃 得点0
先頭打者(5番右)がレフト線へ鋭い打球を放つ
レフトがフェンスに当たったクッションボールを素早く返球し、打者走者は1塁ストップ
※打者走者はさほど遅い印象はない 無死1塁
6番打者、カウント1−1でエンドラン決行、やや強めのショートゴロ
ショートはランナーのスタートを見て、ワンステップ2塁方向に流れるも瞬時に切り返す
打球に間に合い、素早く2塁へ転送、間一髪のタイミングでアウトを取る
1塁はセーフで1死1塁 7番打者は内野フライで2死1塁
8番打者の初球にランナー好スタート、捕手のタッチボール送球で盗塁阻止 無得点
3回表 ナゴド攻撃 翔洋P 11→途中1(右) 得点3
先頭打者は俊足の1番打者(左/背番号6)
この回の攻防がポイントかなと思っていた矢先に
ライトポール際に特大ホームランを放つ(推定100m弾)得点1 【2−0】
インコースの真っ直ぐをうまく捌いた印象
次の2番打者(左)を追い込んで、ショートへ内野ゴロを打たせるも
高いバウンドにチャージしすぎて捕球できず、さらに拾ったボールを悪送球し、打者走者は2塁へ(無死2塁)
ここで投手交代11⇨1(右)へ 先発投手よりも小柄だが、ボールに力がある
3番打者はバントを2回ファールにした後、ヒッティングに切り替える ※守備陣型は定位置
当てただけの打球がセカンドとファースト裏の間に落ちて、無死1・3塁
翔洋守備陣はゲッツーシフトを選択
4番は1塁側セーフティースクイズを試みるも失敗、ヒッティングに切り替えるも内野フライで1死
翔洋守備陣はゲッツーシフトを継続
5番が一塁側セーフティースクイズを決め、得点1 【3ー0】
なおも、2死2塁 6番の打ち取った打球がライト線(ファースト裏)へ落ち
さらに得点1 【4ー0】
ここからは得点は入らず、4ー0で名古屋ドジャースの勝利となりました
後半戦でも両チームのハイレベルな攻防が続きました
以下、解説していきます
勝敗のポイント(試合前予想も含め)
ナゴド投手(背番号1)がどのように翔洋打線を抑えたか
県大会の時には、抜け球もあった背番号1がこの日は抜群の仕上がりをしていました
約1ヶ月の取り組みが成果となって出ていました ※何をしたかは不明(フォームに大きな変化はなし)
翔洋打線であれば、「低めのボール球(スライダー)」を見逃すこともできるだろうと予想していましたが、左打者が足元のボールを振る光景がよく見られました
「バックフット」と呼ばれる軸足付近へ投げるスライダーが非常に効果的でした
コースに投げ切れば、ファールにしかならず、左打者がよく手を出してくれるボールをしっかり投げ切っていました
このスライダーを翔洋打線に「意識付け」できたことが完封の大きな要因だと思います
捕手がしっかりとワンバンを止めていたこと(後逸0)も素晴らしかったです
「流れを呼び込んだナゴド」「流れを切れなかった翔洋」
ビッグイニングとなった3回表の攻防が結果的に勝敗の決め手になりました
おそらく翔洋は「4・5点取れる」予定でゲームプランを考えていたのではないかと思います
初回の1点、2回のホームランでの追加点はしょうがないとして、
ミスと不運なヒットでピンチが広がり、安全な作戦で1点を取られるという
「一番嫌な得点パターン」で3点目を失ってしまいました
2点差からの「次の1点」がどちらに入るかによって、ゲームの展開は大きく異なります
3回表 0−2 無死1・3塁での守備陣形は非常に難しい判断だったと思います
前進すると、無条件で2・3塁、後ろに守れば、1塁側セーフティースクイズ
1点を嫌がって、前進した結果、大量失点すれば挽回できなくなります
翔洋は大量失点を避ける判断をしました ※3点目を諦めたわけではない
結果としては、ポイントとなる3点目を取られ、4点目はその流れのままにタイムリーヒット(ポテン)が出てしまいました
その時点では「勝負アリ」となっていない雰囲気でしたが、圧倒的にナゴド有利な展開になったことは間違いありませんでした
その後、ナゴドが流れを渡さない守備を披露したことは後ほど、深堀していきます
1・3塁対応のアイディア
1・3塁の話が出てきたので、情報共有しておきましょう
1・3塁の攻防は攻撃側に「後出しジャンケン」の権利があります
つまり、相手の陣形を見てから作戦を決定できます
今回のナゴドの判断はとても冷静で、打者もしっかりとファーストに取らせる素晴らしいバントでした
ちなみに1・3塁で、私がやられて嫌なのは、以下の2パターンです
① 1塁側セーフティーを潰しに、「セカンドを前にする」※ショートは後ろ
よくあるのはショートを前にするパターン(※右打者の場合)ですが、レベルが上がると「引きつけて逆方向の技術」は多くの選手が身につけています
発想を変えて、セカンドを前にすることで「引っ張ろう」と思ってくれれば、変化球で空振りを取れる可能性があります
また、1・3塁の常套手段である1塁側セーフティースクイズも実行しにくいシフトになります
あまり使うチームはないですが、小技を使うチームには効果的な作戦かもしれません
盗塁してきた時の対応練習は必須になります
② 攻撃のサインが出し終わった後に、「シフト」を変更する
例えば、セットに入った時はショート・セカンドは後ろに位置しておいて
ピッチャーの始動前に、どちらか・両方とも移動するというパターンも意外に効果的だと思います
ただ、何球も同じパターンで動くと攻撃側は「意図」を理解し、効果はなくなります
例えば、1塁側セーフティースクイズを企画しているチームに対して、
「ピックオフ」のような使い方をすれば、
作戦の阻止(本塁刺殺)や1塁走者の飛び出しを誘いアウトにできるかもしれません
サインプレーの一つとして、やってみる価値はありそうです
流れを切るための「継投」
翔洋としては「流れを止めるため」の投手交代も実らず、ナゴドのペースで進む苦しいイニングとなりました
継投のタイミングは「正解がない」と言われますが、改めてその難しさを実感しました
先発投手は「2点まで我慢する」と決めていたのかもしれません ※あくまで予想
ハイレベルな投手陣を擁していると、余計に難しいと思います
継投のタイミングの一つに「打ち損じがヒットになった時」とも言います
投手交代の権限を持つスタッフは「変えて、後悔すること」を恐れず、先手を打って「継く」ことを心がけてください
残念ながら、打たれからでは「繋(継)がりません」
ナゴド守備陣の球際の強さ・準備力→翔洋の武器「積極的な攻撃」を出させない
- 初回 ファースト 横っ飛び(ゴロ好捕)
- 2回 レフト クッションボールの対応、好返球
- 2回 ショート 切り返し動作からの打球処理、2塁へのスロー
- 2回 キャッチャー 完璧なタッチボール送球
ここまでは試合展開でも挙げたポイントですが、ナゴド側はただ守るだけではなく
「攻めながら守っていた」印象があります
具体例を挙げると、3回裏以降も翔洋はランナーを何人も出していますが、
その際にナゴドは「エンドラン」「盗塁」を警戒・阻止するために、
「平行カウントからのウエスト(外し)」を行っていました
平行カウントは本来「外しにくいカウント」なので、作戦(エンドラン)を仕掛けるタイミングです
このウエストによって、翔洋はエンドラン・盗塁を「仕掛けにくい」状態に持って行かれたような印象を受けました
「4ー0で勝っていれば、1点くらい大丈夫」という考え方が多いと思いますが、
爆発力のある翔洋打線に対しては「一つの進塁も簡単には許さない」という姿勢も必要なのかもしれません
ウエストにはカウントを悪くするリスクも伴いますが、
今日の背番号1の調子を考えた時に、ボール1個外すことは支障ない
むしろメリットが大きいと判断したということでしょう
ちなみに、4回でランナー1塁1ストライクから2球連続でウエストした場面もありました
「相手の強みを消す布石」を入念に準備し、実行しただけかもしれません
安定した投手だからこそ、実行できる作戦ともいえます
中学軟式野球の最高峰に向けて
この1戦は間違いなく全国トップレベルでした
野球は「3アウト以内に本塁ベースを踏めた回数を競うゲーム」ですが、
各塁の進塁に対して「一つも簡単に進ませない」というこだわりが必要と感じた1戦でした
得点に直結する「1死3塁」の攻防も非常に重要ですが、その前の局面(0,1死1・2塁)をどのように打開し、阻止していくのか
トップチームは残りの1ヶ月で細部にこだわっていこうと思います
選手たちの中でも、一つの進塁や進塁阻止について、高いレベルで話し合いをしてもらいたいです
「勝負の神は細部に宿る」 まだまだレベルアップできます
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