本日の結論「ランナー1塁からの攻撃は期待値と確率で決まる」
久しぶりの記事で、いきなり「期待値」といったよく分からない言葉を出されて、拒絶反応が出ている選手もいるかもしれません
「安心してください、説明します」
野球の「ゲーム性」を理解できれば、さらに野球が面白くなるはずです
出来るだけ分かりやすく分解して説明するので、1つずつ理解してください
状況別得点確率(2004年〜2013年NPBを対象)
上記は『勝てる野球の統計学 セイバーメトリクス』で紹介されているデータです
「ランナー1塁」だけを抽出すると、以下の確率で得点に至ります
- 無死 40.6%
- 1死 26.0%
- 2死 12.0%
ちなみに、先頭打者が出塁し、得点確率80%を超えるのは、以下の4パターン
- 無死3塁
- 無死1・3塁
- 無死2・3塁
- 無死満塁
1死取られた後は、同じケースでも60%程度になるデータが出ています
あくまで、「プロ野球」のデータですが、中学軟式でも「野球というゲームの本質」は大きく異なることはないかと思います
「いかにアウトにならずに、ランナーを貯めていくか」が得点確率を高める上で重要なのが分かります
ちなみに出塁した後、「アウトになってランナーを進めた場合」の得点確率は以下の通りです
- “無死1塁”(40.6%)から “1 死2塁”(39.6%)
- “1 死1塁”(26.0%)から “2 死2塁”(21.1%)
- “無死1・2塁”(60.4%)から “1 死2・3塁”(65.2%)
- “1 死1・2塁”(40.8%)から “2 死2・3塁”(27.1%)
- “無死2塁”(58.9%)から “1 死3塁”(62.9%)
頻繁に議論になる「送りバントは有効な作戦なのか」はこのデータを元にされます
しっかりと頭に入れておいてください(守備の時にも「どこでリスクを負うか」の判断基準になる)
状況別得点期待値(2004年〜2013年NPBを対象)
得点期待値は「あるアウトカウント,走者状況が出現した後,イニングが終了するまでに何点入ったか」と定義します
注意すべきポイントとしては、「イニングが終了するまでに何点入ったか」という点で「ある状況から次の打者が打撃を完了するまでに何点入ったか」を計算するものではありません
「ランナー1塁」を見ると、どのアウトカウントでも期待値は「1点未満」です
「1点以上」期待値がある場面は、無死だと 2塁以上
1死だと 1・3塁 2・3塁 満塁
2死はなんと1つもありません
「いかにアウトにならないか」が得点期待値を高めることにおいて重要なのか理解できるはずです
24ケース全てを見ると、無死満塁が2.2点であり、最も大きい(平均2点以上得点する)
「“無死満塁” からは得点が入りにくい」という通説に反し,最も多くの得点が期待できる状況であることが分かります
確率の時と同様に、「アウトになってランナーを進めた場合」の期待値は以下の通りです
- “無死1塁”(0.821)から “1 死2塁”(0.687)
- “1 死1塁”(0.499)から “2 死2塁”(0.321)
- “無死1・2塁”(1.417)から “1 死2・3塁”(1.335)
- “1 死1・2塁”(0.905)から “2 死2・3塁”(0.586)
- “無死2塁”(1.040)から “1 死3塁”(0.919)
先程の「アウトになっても確率が上がるケース」は覚えていますか?
「確率は上げるけども、期待値は下がるケース」がいくつかあります(何ケースあるか数えましょう)
作戦ポイント
24ケースの得点確率と得点期待値を確認した上で、「ランナー1塁」で使用する作戦のポイントについて整理していきます
盗塁(単独スチール)
成功すれば、得点確率を大きく上げることができる盗塁という作戦
仮に、ピッチャー(クイック)が1.2秒+捕手(スローイング)が2.2秒+野手(タッチ)が0.2秒の場合、3.5秒以内に2塁へ到達できる脚力があれば、ほぼ成功します
ただし、失敗すれば(捕手がベースにピンポイントで投げるなど)、一気に得点確率は下がってしまう「諸刃の剣」でもある作戦です
監督としては、『成功確率6割』を超える場合に、出してもいいサインと思っています
「アウトになってもしょうがない」と割り切れる勇気も必要です
絶対に進塁させたいなら、進塁確率が高い「送りバント」を選択するべきです(得点確率は大きく変わらない)
成功確率を上げる方法としては2つ
1. 変化球のタイミングで走ること(タイムが遅い・捕手が投げにくい)
・2球ストレートが続いて、カウント1-1時 ※バッテリーは3球ストレートは続けにくい
・追い込んでから、1球アウトコースに外した後 ※変化球で仕留めるパターン
・ストレートを引っ張って強い打球でファールにした後
もちろん、バッテリーの傾向はイニングを重ねないと分からないですが、ある程度のパターン(バッテリー心理)は覚えておいた方が考えやすいと思います(うちのバッテリーには「型」とその逆を覚えて欲しい)
2. 投手の動きだし前にスタートする(通称/ギャンブル)
・持ちタイム(セット時間)
・牽制パターン(回数)
・動きだし(クセ)
上記のような情報から「根拠を持って走る/スタートを切ること」が大切になります
「なんとなくスタート」は県大会の緊迫した場面では絶対に通用しません(スタートが切れない)
これまで過去に成功してきたギャンブルは「事前の入念な準備」があってこそ成功しています
日頃からその習慣(見るクセ)は身につけたいところです
1人で同時に確認するのは限界があるので、それぞれの得意分野や視点(ランナーコーチャーなど別角度)を利用しましょう
多くの情報を取り込み、うまく整理する「組織力」があると好投手でも攻略しやすいと思います
その他にも、「ディレードスチール」や「軌道スタート」など、自力で進塁する能力を持つことはチームの得点確率UPに直結します
「スキを逃さない習慣」を身につけましょう
秋に意識して取り組んだ「打者のフォロー」も重要です
適当な空振りやバントの構えなどは「ほぼ無意味」です
「全力で打ちに行って止める」ことによって、捕球する際に「違和感」を感じるはずです
上手い選手を見習って、練習しましょう
ヒッティング
相手が「よく走るチーム」でも、「打力(長打)がない」チームであれば、さほど怖くありません
なぜならストレート一本でも大怪我(大量失点)をする確率は低いからです
理想の攻撃としては「外ストレートを狙い撃ちして、長打を放ち得点もしくは1・3塁を作る」こと
それを嫌がって、変化球が増えたところを「走者と連動して攻める」
つまり、打者には「アウトコースのストレートを狙い、確実にヒットにするスキル」が求められます
今の皆さんにその自信はありますか?
ただ、遠くに飛ばすことを求めるだけでは「野球の試合は勝てません」
普段の練習から「場面を想定した打撃」も取り入れて、ゲームで活きる能力を向上させましょう
「ランナー1塁」での攻撃に強い9人を揃え、どこからでも場面を展開できるチームが「勝つ確率が高いチーム」です
ヒット&ラン(通称/エンドラン)
エンドランを使用する際の目的は2つ
1. 併殺(2塁フォースアウト)を防ぎ、ランナーを進塁させたい
例えば、無死1塁2ストライクでエンドランのサインが出た場合、この作戦の目的は1.ランナーの進塁となります
2. ヒットゾーンを広げ、チャンスを拡大したい
1死1塁の場合は、基本的に2.チャンス拡大となります(確率と期待値の話を思い出してください)
「低めの変化球」はヒットにするのも難しく、捕手も良い送球がしにくいため、打たない(見逃す)ことを徹底してください
エンドランはあくまで「奇襲」の作戦です
一度、成功すると取り憑かれる監督も多いですが、連発している場合は「もう手詰まりです」と教えてくれているようなものです
個人的には、「ランナーを動かしたいけど、高めのストレートが来て、盗塁死になるのが嫌な場合」にエンドランを用いることがあります(低めの変化球なら盗塁成功)
打者は「盗塁のベースカーバーへ入る方向」に打球を打つことができれば、ヒットの確率は上がります
そのためには、盗塁や「偽装スタート」の際に、ショート・セカンドどちらがベースにいくかを確認しておく必要があります(打者の右左によって、変わるチームもある)
ラン&ヒット
ランナーは盗塁+ヒッティングという作戦です
アウトカウントにかかわらず、2ストライクからの盗塁は自動的にこの作戦が適用されます
よく使用する場面は以下の2つ
1. 2死1塁(長打が出れば、一気にホームイン)
2死1塁からこの作戦を用いる時は、思い切って長打を狙って欲しい(単打が2本続くことは難しい)と思っています
2.「変化球と読んで、盗塁させる」けど、ストレート(好球)だったら打って欲しい時
「打者から打つ機会を奪わないこと」がこの作戦を選択する意図になります
もし空振りした際も、捕手の邪魔にならない配慮も必要です(打席から出ると守備妨害ですが、しゃがんでいればOKな時も)
ランナーはエンドラン同様、必ずインパクト・打球をチェックする必要があります
一瞬で状況を確認し、判断するスキルも必要です
送りバント
ランナー2塁にすることが、その打者・場面の「ベスト」と考える場合に使用します
無死1塁、1点(だけ)取りたい終盤であれば、使用することも考える作戦です
バントを決める方向は、基本的に1塁側です(サードはチャージ、ファーストは前に出れない)
高めの強いストレートを想定していないと、差し込まれて「ピッチャー前」に強い打球が飛んでしまいます(2塁で封殺される)
そして、低めの変化球を「膝で追いかけるスキル」は必須です
打球が切れやすくなるため、そのままファールゾーンに身体が流れないように注意しましょう(打球がフェアゾーンに落ちるまで打席で我慢)
2回失敗した後(2ストライク)の「なんとかしないと」を逆手に取り、ボール球の変化球を振らされることが起こります(うちのバッテリーには、その余裕が欲しい)
逆方向を意識したバッティングをすれば、空振りは減るはずです(当てにいくとボール球に釣られます)
送りバントを多用するチームであれば、発展としてバスターを組み合わせると効果的ですが、
極端なバントシフトを敷くチーム以外には不要な作戦です
今後の戦術・練習プランを考える
自分の「強み・長所」を生かした作戦を「監督・コーチに提案できるようになりましょう」
もし曖昧な選手は、この機会に整理してください
1・2月は「強い個」の集団を作る時期でした
新しい発見やコンバートの方向性も見え、チームとしては順調に進んでいます【競争はまだまだこれから】
3月に入れば、対外試合も増え、公式戦もスタートします【勝つチームになる/全勝】
「ゲームで活躍する」「試合に勝つ」そのためのスキルを磨く時間も必要になっていきます
選択練習の時間も終日活動があれば、1日1回(90分)は作ります
大切な時間を無駄にせず、意図を持った取り組みを継続しましょう
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